【さまつな楽しみ】編集局次長 森脇睦郎 通勤電車あの人の眠り方(産経新聞)

 生活の不規則さが自慢の新聞社勤務であっても、部長、局次長などといういわゆる管理職になると、毎日、同じ時間帯に出勤する規則性が生まれてくる。すると当然、ほぼ同時刻に自宅を出て、同じ電車に乗る生活だ。人間とは不思議なもので同じ時刻の同じ電車に乗るときは同じ車両を選び、しかも同じドアから乗り込むようになる。

 異なるのは乗ってからで、込み具合やすでに乗ってきた人たちの立ち位置によって自分の居場所が決まる。しかし車両の中を見渡すと、いつもと同じ顔ぶれが集まっていることがわかる。いつも立っている人はやはり立ち、いつも座っている人は座っている。そして、いつも眠っている人はいつ見ても眠っている。

 睡眠スタイルだけはみな個性的だ。車窓を背にして座るロングシートのほぼ中央で、ひざの上にかばんを置き、両手をがっちりと組む。前方に少しだけ頭を傾けて微動だにしない「通勤睡眠」のお手本を披露している中年男性もいれば、後頭部を車窓にもたれかけさせて顔を上に向け、口をぽかんと開けた全開スタイルの若い女性もいる。

 そんななか、とびきり個性的な常連女性がいる。長い髪が顔にかぶさり一度も顔を見たことがない。服装からすれば20代後半から30代前半というところだろう。片側に上半身を大きく傾け、隣の乗客にもたれかかっている。相手の肩を枕に、恋人のように独占状態だ。他人に全身全霊を委ねるような眠り方。これまで、あれほどのもたれかかりようは見たことがない。

 隣の乗客はほとほと困った表情である。「こりゃどうにもならん」とあきらめ顔だったり、不快さをにじませながら耐えていたり。ときどき肩をゆすって起こしにかかる人もいる。気づいた女性は一瞬まっすぐな姿勢に戻るが、電車が動き出すと、またしっかりもたれかかる。隣に座ったら大変だ。

 あるとき、電車が停車駅に近づいて、もたれかかられていた乗客がすっと立ち上がる場面があった。いつものように女性は全身を委ねて眠っていたから、支えを失って横倒しになるはずである。ところが、女性の上半身はもたれかかっているときの形のまま崩れない。次の停車駅が近づき、今度は逆隣の乗客がかばんを持って降車の態勢に入った。ついに両隣が空席になる。隣の乗客との摩擦力で転倒せずにいたなら今度こそ支えを失って倒れるはずだ。その瞬間を目撃すべく、まばたきを我慢してまで待ちうけた。が、なぜか倒れない。傾斜約60度の姿勢を保ったままだ。目的の駅に着くと女性は何事もなかったかのように立ち上がり、さっさと電車を降りた。隣がどうあれ、大きく傾斜して眠るのが女性の睡眠スタイルだったのである。

 通勤電車は眠い。座れず眠れずだとくやしいものだ。しかし、人間観察の絶好の場だと思えばくやしさも楽しさに変わる。

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